三日月ゆり子著『旅の夢かなえます~だれもがどこへでも行ける旅行をつくる~』

三日月ゆり子著『旅の夢かなえます~だれもがどこへでも行ける旅行をつくる~』

 今回は、会議の報告などではなくて、私が最近といっても去年の秋ですが読んだ本で、気楽に読めるのですが、ユニバーサルデザインとはどういうことか(本当は、障害のある人はどういうことを考えているのだろう、どういうことを望んでいるのだろうということを知る手がかりにならないか)を考えるきっかけになればと思いご紹介します。
 この本には5人の方が登場します。そのうちの1人は、私も時々一緒に活動させていただいたり、学生の実習でお世話になっている方です。

第1章 景色が見えなくても旅は楽しい~一人旅がくれた宝物
第2章 行きたい気持ちの背中を押して~高齢者や障害者の旅をつくる
第3章 旅で決意した自立生活~電動車いすでどこへでも
第4章 バリアフリーは楽しみながら~ユニバーサルデザインのホテルをめざしたアイディアマン
第5章 ちがいに出会えば出会うほど~外国からの旅人をむかえる小さな旅館

第1章は、服部敦史さんという全盲の視覚障害の方が主人公です。
第2章は、ベルテンポ・トラベル・アンドコンサルタンツという旅行会社の社長、高萩徳宗(のりとし)さんが主人公です。
第3章は、麩澤 孝さんという肩から上しか動かせない頚随損傷者の方が主人公です。
第4章は、土浦にあるラクスマリーナ(旧、京成マリーナ)の秋元昭臣さんが主人公です。
第5章は、東京の下町で澤の屋旅館を経営する、澤 功さんが主人公です。

 この中で、私が特に考え込んだ箇所が2ヶ所あります。その部分を少し長くなりますが引用します。
1つ目は、第2章の高萩さんのお話の中にある段落です。

ユニバーサルな旅とは?
最後に一つみなさんに質問です。あなたがツアーの添乗員さんだったら、こんなときどうしますか?
バスツアー中、階段を三十段ぐらい昇ったところに、絶景の桜スポットがありました。でも、お客さんの中に車いすを使っている人が一人いて、その人は階段を上ることができません。あなたは、お客さんたちに「桜を見に行きましょう」と言いますか?それとも、車いすを使っている人がかわいそうだから、桜には一言もふれずに通過しますか?
「多くの旅行会社では、こういった場合、桜は無視して通過してしまうんです。一人のために、なかったことにするんです。
高萩さんは、そう教えてくれました。
でも、高萩さん自身は、こんなふうに言うようにしています。
「行ける人だけでどうぞ行ってきてください。ご自分で無理だなと思う方は、バスに残っていてください」
みなさんは、この対応をどう考えるでしょうか。
「たとえば自分が車いすに乗っているとする。自分に気をつかってみんなが桜を見に行かなかったら、どうでしょう。わたしはすごくいやですよ。行ける人だけでも行ってほしい。そのほうが気が楽だし、うれしいことだと思うんです」
たとえ車いすを使っている人が行けなくても、いっしょに行った人が写真を撮ってきて、あとで見ながら会話を楽しめばいいことです。楽しいはずの旅行で、みんながだれか一人のためにがまんするというのはおかしいと思う、と高萩さんは言います。
「わたしは、こんなやり方が、ほんとうのユニバーサルデザインだとおもっているんです」

 2つ目は、第3章の麩沢さんのお話の中にある段落です。
「ほんとうに行きたいところには行けない」というジレンマ
麩澤さんが次に旅行に行きたい場所は、国内なら北海道や沖縄だそうです。でも、麩澤さんが行きたいと思っている沖縄の小さな離島では、電動車いすでは乗れない船もあるかもしれないし、行けたとしても現地での介助が受けられない場合があります。
「だれでもそうだと思いますが、ほんとうに行きたいところっていうのは、バリアフリーなんかの設備がないところなんですよね。静かな南の島だったり、山奥のお寺だったり」
たしかに、風情のある温泉旅館や歴史ある寺院には、歩いていくからこそ魅力が増すということもあります。そして、ときにその魅力は、スロープができたり、バスや電車が発達することで、半減してしまうということがあります。
「そこにスロープやエレベーターがないと、ぼくは行くことができない。でもぼくは、それらが付くことで、その場所の雰囲気がそこなわれるようなことがあっては、意味がないんじゃないかって思うんです。自分の行きたいという気持ちと、その場所にとっては「ぼくが行けないままのほうがいいんじゃないか」と思う気持ちのあいだで、ジレンマがあります。
いろいろな考え方がありますが、ぼく自身は『それでも行けるようしてほしい』と強く言いたいとは思わないんです。
みなさんは、麩澤さんのこの意見を聞いて、どう思いましたか?
障害のある人は必ずしも、「自分たちができないことをすべてできるようにしてほしい」と思っているわけではないことが感じられます。ですから、わたしたちが「車いす利用者のため」と思いこんでしていることが、じつは本人たちを苦しめてしまっていることも多いのです。
最近では、エレベーターやスロープも、景観を壊さないよう、デザインをくふうしている観光地や旅館も増えてきています。バリアフリーも景観もどちらも考えるというのは難しいことですが、それが実現できたときはじめて、だれもがその場所を楽しめるようになるのかもしれません。
「ぼくは『もうちょっと気をつかってよ』とこっちが思うぐらいがちょうどいいんじゃないか、と思っているんです。ぼくの場合、車いすだからって気をつかってもらっている、とわかると、楽しみが半減しちゃうんです。旅行でのことだけじゃなくて、日常でもそうです。そう感じるのは、ぼくだけではないと思います」

  大分長く引用してしまいました。どう感じるかは皆さんの自由です。一度、手に取って読んでみてください。また、おもしろかった本やできごとがあったら、ぜひ紹介してください。ちなみに大日本図書から出ていて、1600円です。