1月15日の新聞に、「義足ランナー五輪ならず」という小さな記事が掲載されていた。両足の膝から下がない彼は「チータ」という義足(競技用補装具)をつけ、障害者陸上の大会で短距離3種目(100、200、400m)の世界記録を持ち、北京オリンピックの参加を希望していた。昨年11月に国際陸上競技連盟(以下、国際陸連)の承認のもと、ケルンのドイツスポーツ大学で実施された、彼及び400mで彼と同能力の健常選手5名が参加した調査で、彼が使用している義足が健常選手より有利になるテクニカルエイド(補助装置)にあたるとされ、それが国際陸連の規約に違反すると判断され、今回の決定となったようだ。
調査報告によると、ピストリウスは競技用ブレードを付けて健常短距離選手と同じスピードで走る場合、約25%少ないエネルギー消費で済むこと、疾走時の競技用ブレードのエネルギー損失が9.3%であるのに対し、健常の選手の足関節での平均エネルギー損失は41.4%であり、これにより、ブレードは健常選手の正常な足関節より30%以上物理的に有利であることなどが述べられている。
国際陸連はこの報告書を再調査し、この競技用ブレードが国際陸連規則144.2で禁じられた補助装置であることを確認し、ピストリウスは国際陸連管轄下の大会に参加する資格がないと結論した。
藤田(日本福祉大学)は、以前、自身のインターネットブログで、ピストリウス選手に関して以下のように述べている。
「(前略)実は2年程前に障害者スポーツ科学という学術雑誌の巻頭言でこうした状況が将来生起したときにどう判断するのか、学会としての見識を持つべきだということを書きました。こんなに早く現実となるとは思いませんでした。義足はドーピングと同じか・・・。選手の体の「−」を「0」にするのが義足や車いす、「0」を「+」にするのがドーピングとすれば、オスカー選手はドーピングにはあたりません。しかし、ことはそれほど単純ではないでしょう。「0」はどのレベルなのかとか、確かにオスカー選手の場合、自分の脚ではないというハンディがありますが一方で、膝下に疲労はたまらないというのも現実でしょう。「助力にあたらない」基準を明確にした上で、その基準と照らし合わせオスカー選手のケースが判断されるべきでしょう。(後略)」
今回の研究には10名以上の科学者が参加したとされる。人間の脚(身体というべきか)並みと判断される競技用補装具の作成基準が明確に示される時期は、それほど先ではないかもしれない。性、人種を超えて来たオリンピックが、障害の有無を乗り越えるのはそれほど先ではないかもしれない。
平成20年2月5日